帰り際。


図書室から出ると、大事なことを思い出した。


「あ、早瀬君。
明日、私、来れない、ん、だけど……」


私は、早瀬君の顔を窺いながら言った。


「……うん。
わかった」


特に理由を追究しない早瀬君。


ガチャン。


図書室の鍵を閉めながら、取り立てて顔色を変えるでもない。


「……理由。
聞かないの?」


特に意図せず口から疑問が出た。


早瀬君は役目を終えた鍵をカチャリと握り、私を見下ろす。


「聞いて欲しいの?」


……。


なんか、ずるいんだよな。


早瀬君の返し。


いつも私が不利になる。