煮つまった部屋の空気が気持ち悪くて、ベッドから立ち上がると、窓をあける。

とたんに、セミの声が、何倍にも膨れ上がった。

耳にせまってくるセミの羽音は、「おはよう」と告げているというよりは、「起きろ!はたらけ!」って、怒鳴っているかんじに近い。


そうだな。ベッドに寝たきりじゃ、ダメだよな。


全開にした窓の前で、大きく伸びをする。

Tシャツと短パンのあいだから、顔を出したおなかを、ぬるい空気がなでた。


昨日塾に行き、田岡と話をしたことで、わたしのからだとこころは、現実にふれたんだと思う。

じっと横たわってばかりいるのは、いやだった。壁ばかり見ていても、なにも思い浮かばない。

ちゃんと活動しなければ。

そんな気持ちが、生まれていた。


空気の入れ替えと、気持ちの入れ替え。

背筋がすっかりのびたわたしは、お母さんが置いていった朝ご飯を食べたあと、めったにしない、部屋の掃除にとりかかることにした。