「え?……えっ!?」
突然の声にびっくりして、私はがらんとしている教室の中をきょろきょろと見回す。
「えへへ、びっくりした〜?」
ひょこっと廊下から顔を出したのは、同じクラスの女の子――山田亜紀恵(やまだ あきえ)さんだった。
「ややや山田さん!?」
「やっほー桜さん、ちゃんとこうして話すのは初めてだよね」
山田さんはそう言って、にこっと屈託の無い笑顔を浮かべた。
山田さんとは、ほんとにたまーに、朝教室ですれ違った時とかに挨拶を交わすぐらいの間柄。
そんなだから、もちろん私の緊張バロメーター的なものは急上昇。せっかく相沢くんと別れて、少し落ち着いたところだったのに。
「えーと、山田さんどうして……帰ったのでは……?」
「あー、ちょっと忘れ物しちゃってさ!」
自分の席に駆け寄ると、がさがさと机の中をあさる山田さん。
課題のプリントを忘れていたらしく、中からぐしゃくじゃになったプリントが現れ出た。
「よしよし、これで赤点はなんとか免れそうだぜ〜。バカはこういう課題の提出とかで点を稼ぐしかないから大変なんだよね〜」
「は、はぁ……そうなんですか……」