「わるいって」

何も言わずに見つめる私の顔が、いつもと違うようには感じたのだろうか。

いつもよりも少し申し訳なさそうな顔を私に向ける。


「――…やだ」

声は震えた。
そして小さかった。

だけどそれが私の今の精一杯の声だった。


「行かないで――…今日は…」

お願いだから。

「悪い、ほんと今度埋め合わせするから」

「いや!今日じゃなくちゃ――…!!今日だけはダメ!」

「なんだよ、今日は何なんだよ…アレも嫌コレも嫌って…映画も嫌なんだろー

行くところもないし何がしたいんだよ」

そうじゃないんだってば!そんなんじゃない…!

言葉が出なくて涙が溢れそうになるけど――それはしたくない…

なんで泣いているのか聞かれても答えられない。今でさえ何も答えられないのに。

「用事なんだからしかたねーじゃん」



嘘つき。



「俺だって別に行きたくて行く訳じゃねえんだから」



大嘘つき。