「あ、すいません」

何が何だか分からない状況で、通りすがりの男の子が謝る声だけが耳に届いた。

「お前、ぼーっとすんなよ。あぶねーだろ」

「え?あ…ありが、とう」

まだイマイチよくわからないけど、修弥に捕まれた肩が痛い。そんな勢いよく引っ張らなくても良いのに…


ぶつかりそうになったんだろうけれど、そんなの分からない。

あからさまに苛立ちを感じている顔を見上げて、それ以上は何も言えなかった。

後ろから人が来たんだから見えるわけ無いじゃない。ぼーっとしていたのは確かだけれど…


「ったく…気をつけろよ」

あんたこそ――…


ふっと肩から手が離されて、久々に修弥に触れたことを感じながらため息がこぼれ落ちる。


重い重いため息は、雨と同じように地に落ちる様な気がした。



――プルルルル



電話が鳴る。
一瞬にして凍り付く体。