考えないで、目の前にあることを考えて。

そうじゃなきゃ何も始まらない。そうじゃなきゃ終わってしまう。


気持ちは焦っているのに、頭が何も働かないまま刻々と時間が過ぎ去っていくのを感じる。


時折修弥に呼びかけられるけれど、適当に笑って済ませた。話なんてしてる場合じゃない。何も頭に入らないってきっとこういうことなんだろう。

バシャバシャと歩く度に水が跳ね返ってきて、足下を重く重くしていく。


「お前ホント雨の時機嫌悪いよなあ」

足下を見つめながら歩く私に、修弥の呆れたような声が聞こえて顔を上げた。

「…そんな事無いと思うけど…」

雨は好きじゃないし、雨の日はテンションが下がるのは確かだけど、そんなの機嫌悪い事もないと思う。

そもそも今日は期限が悪い訳じゃないし、雨のせいな訳でもないし。


「たまたま雨だからって適当に…」

「だってお前が機嫌悪いのいっつも雨じゃねえか、中学んときから」

そんなことないと思うけど…

修弥の言葉に自分の昔を思い出してみたけれど特に何も思い出せない。

「…気のせいじゃないの?」

修弥のことだから適当に言ってるだけでしょ?と口を開きかけたものの、さすがにそれは言葉にはしなかった。