「もー早く行きなよ」
女の子、トモカさんの声が聞こえて顔を上げた。
私の方を見てニッコリと微笑む彼女の笑顔が胸に突き刺さるように痛む。
なんでそんなことが言えるんだろう…私がもしも今日…一緒に修弥と帰らなければ――…
「おー、じゃあいくか」
修弥の声にびくっと体が跳ね上がり、そのまま気にする素振りもなく背を向けて歩き始める修弥の後を追いかけた。
ちらりと、後ろを振り返ると女の子は私と修弥を真っ直ぐに見てる。
なんで、私が悪いことをしているような気分にならないといけないんだ。
見なかったようにすぐさま修弥の背に視線を戻して鞄を握りしめながら歩く。
見えない彼女の視線が、背中にいつまでも突き刺さってくるみたいに感じる。
まだ見ているのか、もう見ていないのか、前を向いたままの私には分からないけれど。
ただ背中に集中した神経が、振り向くな、そう私に告げているような、そんな気がした。