「なんでこんなにマイナス思考なんだろ…」

こんな自分じゃないはずなのに。

はあっとため息をついて、久しぶりに息を吐き出したかのような感覚と、顎に痛みを感じた。

ずっと…歯を食いしばっていたのか…無意識のうちに。

そう思うと、さっき以上のため息がこぼれ落ちた。



「実結」

重い空気とは打って変わって明るい声が静かな教室に響き渡る。

何も言わずに振り返るその先にいる修弥の姿が私には夢のように思える。現実味がない…そう感じてしまうのは何でだろう。


「どした?」

振り向いたものの動く気配のない私に、少し心配してくれているのか教室内に一歩足を踏み入れてくる修弥から反射的に目をそらして席を立った。



つまらないことを考えている場合じゃないんだと、あれほど何度も自分に言い聞かせているのに。

「体調でも悪いのか?顔色わりーぞ?」

「なんでもない…大丈夫」

取りあえず――…何とかしなくちゃいけないんだから。体が重いだのなんだのと言っている場合じゃない。


そのまま修弥の隣に並んで教室を出ると、笑い声が廊下に響いた。

「おー修弥!と修弥の彼女!」

「まだいたのかお前ら」

背後から掛けられた声に修弥が振り向いて声を上げた。