何かが、何を指すのか、わからないけれど。

不安とか不満とか?わからないけれど。

家も近くない女の子。
話したことはないけれど可愛い女の子。


誰?と軽く聞けば済む話かもしれないけれど、それを口に出せるほど私は素直じゃないし、私たちの関係も固く結ばれているとは言えないのではないかと思える。


「――わかんない」


そうとしか答えられない。

それがなおさらイライラさせる。


くだらない事だと思い込む以外に今の私には逃げる方法がないんだ。


「修弥君も素直じゃないからなあ。実結と一緒で」

「なにそれ」

佐喜子の言葉に、思わず苦笑がこぼれた。

窓の外ではまだ雨が、少しさっきよりも音を荒げて降り注いでいる。




雨はあんまり好きじゃない。

傘を差すのは面倒だし、服も濡れるし、出かけたらどこもかしもびしょ濡れ。

前髪は雨で真っ直ぐになってくれないし、ショートボブの髪型もうまくまとまらない。いやになる。


――やっぱり今日は、ついてないなあ


何となくそう思って、先生が教室に入ってきたことを確認して前を向いた。