佐喜子の言葉に、ぴりっと全身に小さな電流が流れたような気がした。

「…そう、いうんじゃない…けど」

このタイミングでその話を思い出してしまうと、さっきまでの複雑な思いがなお一層複雑に混じり合う。

「でも――…」

「ちがうってー。そんなんじゃないよ。

そりゃ気にしてないと言えば嘘になるけど…別にそれならそれで仕方ないし…

あいつだって別に何も気にしないで出て行ったんだから、そこを佐喜子が気にしてどうするのよー」

自分で言ってて自分の言葉がちくちく胸に刺さる。


自分で自分の首を絞めるってこういう事を言うんだっけ?


無駄にから元気な自分の声が自分で痛々しく感じた。

気にしてないわけじゃない。
だけど、今は。


気にしない方が良い。

そう思った。


「なら良いけど――…何度も言うように、あんなのただの噂なんだから、あんまり気にしないようにね」

何を根拠にそんなことが言えるんだろう。

ただの噂かどうかなんか、わかんないじゃない…

「あーうん」

あいつにとって、修弥にとって、私はどういう存在なのか、私は聞いたことがないんだから、噂と同じくらい今の関係も結構曖昧で、形のないものなんじゃないの?


でもまあ…
今は――…気にしても仕方ないし…


そう言い聞かすしかないじゃない。




一気にガラガラと何かか崩れていくような、そんな不安定な自分を感じたけれど、軽く頭を振って、余計な考えを振り払った。

今は――…取りあえず今は――…