奪い取った教科書には見覚えのある単語が並んでいた。
答えは今見たところで知ってた感じはないけど――…
それでも私はこの単語を、昨日もここで、この場所で、目にしたんだ。
「なんで…忘れてたんだろう…」
「何?そんなに気になってたの?」
意味が分からない顔をして立ち上がった私を佐喜子が見上げた。
「や、あーうん、まあ」
どう説明して良いのか分からなくて、曖昧な返事を返して、ストン、と腰を下ろした。
気持ち悪かったものが、すっと取れた気分だ。
正体の分からない不安が晴れた、そんな気分だ。
「実結ー」
ほっとした私を、教室の端の方から呼ぶ声が聞こえて、心臓がぎゅっと捕まれた気分になった。
今まで思いだそうと必死になって忘れていた――…
「修弥…」
振り返る私に、修弥は相変わらずへらへらしながら私の席に近づいてくる。
何も知らないで、いつも通りの修弥だ。
それが、辛い。