「なにしてんの?」
背後からの修弥の声に、びくりと体が大げさに跳ね上がった。
――私、知ってる。
「や、あの、ちょっとぶつかって…」
「ぼけっとしてるからだ。何やってんだ、行くぞ」
私の言葉を最後まで聞かずに修弥は店の出口に向かって歩き始めた。
――私、これを知ってる。
ぶつかった男の子に少し頭を下げて修弥の後を急いで追うけれど、修弥はいつもより速く歩いている気がする。
追いついた私に少しだけ振り返ると呆れたような顔で「ほんっとバカだな」そう言われるのを、私は知っていた。
「ご、めん」
いつもならきっと『なんで私が――』そういって怒るところだけど…なんでか今日はそこまで頭が回らない。
だって私はこの日を知っている。何でか分からないけど。
何でか分からないじゃない。
――夢で見たのと一緒だから。
いや、そもそも夢?今思えばあんなにも感覚がはっきりしてたのにあれが夢なの?
夢じゃなければ説明つかないけど、夢、それだけで納得出来るものでもない。
――プルルルル
修弥の携帯の電話が鳴って、私の心臓に針が刺さったかのような衝撃が体に走った。