「何?嬉しそうじゃないわね」
修弥が教室を出て行くと、ぼーっと未だ本を眺めている私を佐喜子がのぞき込みながら言った。
「今更、出かけることくらいで嬉しくなんないわよ。一応付き合ってるんだし」
「でも、一週間以上一緒に出かけてなかったでしょ?」
そうだけど――それも珍しい事じゃないでしょ。
そんなことにいちいち一喜一憂してられない。
「なんか変な感じだな…」
「私の台詞よ」
私の呟きに佐喜子が間髪入れずに突っ込んだ。
そうかもしれないけど…そうじゃない。なんだか今日は色んな事が気持ち悪い。
夢と――色々重なるんだ。
だけどそれが珍しいことでもなくて…いつものことで…だけどどこかが引っかかる。
窓の方に視線を移すと、相変わらず雨が空から地に線を描くように降り注いでいた。
雨だから――?
嫌いな雨だから?
フラッシュバックの様に、地面に倒れる修弥の姿が目の前に浮かんで、消えた。
何となく胸騒ぎが収まらない。