それに、別に仲良くない人から借りたって困る…また返しに来るのも面倒だし…


「私持ってるから、貸そうか?」

そう声を掛けてきてニッコリ笑う女の子に、それ以上何も言えなくなるんだから私も大概流されやすいな。


「…あ、りがとう…」

別に忘れてないけど…

私が手をさしのべて受け取ると、女の子はニッコリと笑った。ちくちく傷む胸が、私にその女の子を直視することをさせなかった。

――したくなかった。

肩よりも少し長い髪型は、ふわふわ。笑顔もその髪型に負けてないくらいにふわふわ。

「あ、実結、今日――」

そう修弥の声に思わずばっと顔を上げて「もう、教室戻らないと!」思わずそう叫んだ。

「実結!?」

修弥の声を聞こえないふりをしてそのまま自分の教室まで走った。


別に――気にするような事じゃないのに。

修弥のあのクラスで、一緒に出かける話をするのは、苦手。

修弥に好意を抱く女の子たちの視線を感じてしまうから。


別に何かされるわけでもないのだけれど。それに今は――あの噂の女の子だっているのに…


「バカじゃないの」

そんな場所で私を誘うなんて。バカだね。