「――しゅう、や」
ドアにもたれかかるような体制で振り返ると、そこにはいつも通りの修弥。
髪が少し寝癖で跳ねてる程度でそれ以外はいつも通りだ。
いや、髪型含めていつも通りかもしれない。
「何やってんだ?珍しい」
「や、ちょっと…」
夢で――あんたが死んだから――なんて言えるはずがない。縁起が悪いと怒るか、もしかしたら不安になったのか?と茶化されるだけだ。
「教科書、借りようかと…」
今までそんなの修弥に借りたことなんかないけど。
「は?なんで」
いや、まあ確かに珍しいけど…そんな風に言わなくても良いんじゃない?
不思議そうな顔をしながら修弥は教室に入っていった。
とりあえず…修弥は――ここにいるんだ。
何となく胸をなで下ろした。
何を不安になってるんだろう。くだらない夢に振り回されて…らしくない。
「あ、おはよ、修弥」
「寝癖ついてんじゃねえか」
ほっとしたとたんにクラスから聞こえてくる声。
修弥が教室に入る度にかけられる挨拶。