「ごめん、ちょっと…」
それでも妙に頭に残るのは、夢の最後のシーン。
携帯電話を取りだして修弥の名前を探した。
とりあえず――名前は表示されたものの、未だ収まらない動悸のまま通話ボタンを押した。
携帯電話から機械音が鳴り響く。
ちょうど――三回ほど鳴ったところで、ぷつっと音が途切れて今度は機械の女の人の声で留守番電話に転送された。
――別に、こんなことはいつものことだけど…
電話をマメに見る人じゃない。メールだって気まぐれ。
そもそもこの時間はまだ電車に乗っているかもしれないし…出られないのも無理はない。
「ねえ…修弥って…」
「修弥君がどうしたの?」
それでもぬぐえない不安に、それとなく佐喜子に修弥の名前を告げた。
――とりあえず、何も、ないのかな
佐喜子の返事が余りにも普通で、逆に私から修弥の生を出すことの方が珍しいからか少し興味ありげに見えたくらいだ。
「や、なんでもない…」
なんでもないはず。
多分。
絶対だと言い切れないのが自分で余計に不安にさせる。