「お腹空いたなあ」

修弥の言葉に、ぴくっと小さく体が跳ねたけれど、誤魔化すように振り向いて笑った。

「うん」

刻々と進んで行く時間は止められない。

そんなことは分かってる。
逃げ出したいほどの残り時間を――…延ばす術も止める術も私にはない。


ただ、笑うことしかできない。

ただ、笑えば修弥は同じように笑ってくれる。雨さえも吹き飛ばすように。

それを望むことしかできない。


修弥が私の笑顔を好きだと言ってくれるように、私も――修弥の笑顔が好きだよ。青空に負けない笑顔。雨にも負けない笑顔。


ぐっと言葉と一緒に涙を飲み込んで修弥の隣を歩く。


今日のこと。
バイトのこと。
明日のこと。
昔のこと。

些細な会話だけど、何より楽しい時間を過ごす。その一言一句をいつも常に体に刻む様に。

できる限りのことを、覚えておける様に。


なんとなくで過ごしてしまうのは、もったいない。