「やっぱ忘れてるんだろ。ほんっと冷たいなあお前」
「…だって…え、あ…」
私の顔を見て少し、淋しそうに笑う修弥に胸が痛む。
私の頭に、ぽんっと軽く手を置いて、修弥は窓から空を眺める。
「海に行こうか。晴れてる海に」
――ねえ修弥
修弥はずっと覚えていてくれたんだね。
あんな些細な言葉でさえ。
あの動物園の日に、私が言ったさりげない言葉までも。
ずっと覚えていてくれたんだね。
私、昨日までずっとずっと忘れていたのに。
きっともっともっと多くのことを忘れてるのかな。
「何ないてんの」
「――…泣いてない」
ぼろぼろと涙をこぼしている私を見て笑った修弥に、私は泣きながら笑った。