後ろ姿を見つめると、涙が溢れてしまうだろう。
勝手すぎる修弥に、悔しさと惨めさで。
そう思って、遠くなる足音の方を見ずに勢いよく背を向けた。
その瞬間。
――――キイィ…!ドン!
今まで、聞いたことのない音が雨の音の中響き渡った。
ブレーキの音。何かに、ぶつかる音。そして人の叫び声。それは雨音さえもかき消して世界中に響いたんじゃないかと思う。
それは――…私の背中から。
それは――…修弥が歩いて行った方向から。
人々が音のする方に走っていくのが視界に入って、私もゆっくりと振り返った。
まるでスローモーションのように。
私一人だけ世界に置いて行かれたみたいに、ゆっくりと。