「もーいいよ、勝手に行けば?私一人で映画見て帰るから来週もいらない」

「そんなすねんなよ」

そうさせてるのは修弥じゃない。なのになんで――私が…

零れそうになる涙は、悲しいからじゃない。悔しいから。


「早く行けば?勝手に好きかってすればいいじゃない。他の女の子と遊ぶんなら遊べば?

私には関係ないしどーでもいい」

「は?」

思わず出た言葉に、私はまた唇を固く噛んで、修弥から目をそらした。



雨の音が聞こえる。
雨の音がうるさい。


「何いってんの?お前。ふざけてんの?」

あからさまに不機嫌な修弥の言葉にも私は顔を上げずに口を閉じていた。


今、また口を開くと――全てを吐きだしてしまいそうで。

吐き出せば何かが変わるかもしれないけれど、変わらないことを、心のどこかで望んでいるのかもしれない。

悔しい。
それも悔しい。




「意味わかんねー。勝手にすねてろよ」


何も言わずうつむいている私に、修弥は大きなため息をついた。

それでも反応のない私にもう一度大きなため息をついて、ばしゃっという足音と共に、歩き始めた。