「――佐喜子」

「ん?」

隣に並んで歩きながら名前を呼んでふと気づく。

昨日の話は、昨日の事で、今日の話で、佐喜子はまだ私が知らないと思ってるんだ。

付き合った時のことを…

「あー…」

本当は昨日の事で詳しく修弥のことを聞こうかと思ったのだけれど、うまく言えない事に気づいて言葉を濁らせた。



「修弥は…私のこと…好きなのかな?」



私の言葉に、佐喜子は目を丸くして、その後で「ふっ」と吹き出すように笑う。

…自分で聞いといて何だけど、自分でもこのタイミングで聞くのはちょっと馬鹿みたいだと思った…


「実結はどうなの?」


――…え?


そう言ってくすくすと私の返事を聞くことなく歩いて行く佐喜子に言葉が出ない。


「どーしたの?」

答えも言葉も出ないまま、佐喜子の声に呼ばれて先を歩いた。