「――…」
声が出ない。
何て言えばいいのかまだ分からない。
「ん?」
「――…どこ、行くの?」
これが精一杯だ。
言葉と同時にあふれ出してしまう涙をもう、止めることが出来ない。
「…誰のところに、行くの――…?」
行かないで、と言えない。
もし、それでも行ってしまったら――…そう思うと怖いから。
「ちょ、実結!?え?なんでないてんのお前」
修弥のせいよ。
ずずっと鼻をすすって、何とか涙だけでも止めようとしたけれど、ぽろぽろ零れて修弥の顔ももうはっきりと見れない。
「あー…なんか良くわかんないけど、泣くような事じゃねえって。そんなに映画見たかったのか?」
――馬鹿。
「取りあえず今日はもう行くって言っちまったし…ほんと悪い」
――それでも、答えてくれないんだね。
「ちょ、バイト遅れるから、悪い」
そう言って、私の顔を修弥は自分の袖で無理矢理ごしごしと拭って走った。
――バイ、ト?
走っていってしまった修弥を引き留めようと顔を上げた。
その瞬間にいつもの光景が広がる。