――何の用事?
――誰からの電話?

この言葉を吐きだしたら、また、ケンカになってしまうのかな。


口を固く結んで、余計な事を言わないように地に視線を落として頷くくらいしかできなかった。

「ほんと、ごめんな」

修弥の謝罪が全部痛い

『ちゃんと聞いたら?』

佐喜子の言葉が聞こえる。
言って良いのかわからないよ佐喜子。答えが見つからないから。


『ちゃんと話したら?』


このまま黙っていたら、いつもと一緒で、何も変わらない。

それだけは――…わかるよ。


「――…修弥」

顔を上げると、まだ傍にいた修弥が振り返る。

何でか涙が溢れそうになる。今泣いたら、ダメだ。

何も聞いてないし、何も話してない。


「どうした?」

脚を止めて、体ごと振り返ってくれる修弥の傍に、一歩ずつ近づいた。涙をぐっと堪えながら。