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顔を上げると大きな道路が広がる。

何で今更こんな昔のことを思い出しているんだろう。

――もう、終わりを迎えるからなの?


車が道路を走っていく度に心臓の音が地面にまで響きそうな音を鳴らす。

明日が来る、同じ日が来る

そう分かっているのにそれでも苦しい。


「お腹空いたなあ」

修弥の言葉に、震えそうな声を堪えながら「うん」と小さく返事をした。


――プルルルル

返事と同時に鳴り響く、修弥の電話が今日の終わりを告げる。

また繰り返しの合図。

ぎゅっと目をつむって何もかもを拒否できればいいのに願うしか出来ない。


修弥の返事は分かっているけれど…それでもそれを受け入れることは出来そうにない。


目をつむってしまうと、女の子の顔が何度も何度も浮かび上がってそのたびに、もっともっとと強くつむる。



「あー実結、ごめん」

パタン、と携帯を閉じる音が微かに聞こえて修弥の声が私の意識を今に引き戻した。

「…用事?」

「あーうん…ごめん…」

ゆっくりと口を開いて修弥に問うと、修弥は本当に悪そうな顔をして頭を軽く下げる。