「海とか行きたいなあ」

「いいな、泳げるし」

雨を眺めながらそう言うと、修弥は嬉しそうに言った。

「…私泳げないから泳がなくても良いよ」

「何しに行くんだよ」

「海を見るのが好きなんだよ」

私たちの住む場所には海がないから、海は好きだけど、泳げないから見てるだけでいい。

「晴れた日の海とか、綺麗そうじゃない。水色と水色で」

「水色好きだな。今日も水色だし」

修弥もじゃない。
そう言ってまた笑った。


手を繋いだまま。
話した内容はどれもたわいないことだ。だけどその殆どを覚えてる。


さらさら降る雨も、大嫌いな雨も、せっかくのデートを壊した雨でも、何ら苦にならなかったし、むしろそれも優しい時間だった。