「おい、早く来いよ」

――なんで、そんな偉そうなの。

急に不機嫌になって…私のせいだけど…だけどそこまで怒られる覚えはないし。


呼びかける修弥の声に何も反応せずにとろとろ歩く。

少し前で私の方に振り返って私を待つ修弥は少しだけ視界に入っているけれど――…なるべく見ないようにゆっくりと歩いた。





「お前な――…」

プルルルル…と音が鳴る。それは丁度修弥が追いついた私に何かを言いかけたとき。

言いかけた言葉を飲み込んで、修弥は渋い顔をしながら携帯電話を取った。

「はい」

むすっとして、立ち止まる修弥の傍で雨の中歩く人たちの姿を眺める。

色とりどりの傘があるのに、なんだってこんなに暗い今日なんだろう。


――全然面白くも楽しくもない。

雨のせいだけじゃない、そんなことはもう分かってる。


「え?や、今日は――…えー?」

少し焦ったような困ったような修弥の声に、少しだけ目線を修弥に向けた。

声と同じように困ったような顔。

「まじで?あー…わかった…じゃあ今から行くわ」

今から?どこに?
映画に行くんじゃないの?

電話が終わったのか修弥は携帯を閉じてポケットに直すと私を見た。

いやな、予感。