「ねえ、映画、行くの?」

「何で?何かしたいことあんの?」

別にないけど…
靴箱でそう問いかけると、修弥は「じゃあ映画でいいじゃん」と何も気にせずに靴を履き替える。

映画に行くのが嫌なんじゃなくて…違う場所に行きたい。



足がすくむ。
この先の結末は――…

けれど、もう変えられないのかもしれない。




諦めにも近い。
――どうせまた、繰り返す。


あの光景を見るのは何度見たって嫌だけれど…今ここでケンカしてしまったら聞きたいことも聞けなくなってしまう。


聞いたら何かが変わるかもしれない。

変わらなかったら、また、明日だ。


「うん」

修弥には聞こえることはないほど小さな声で返事をした。

その返事は、修弥の言葉にたいしてなのか、自分にたいしてなのか。