「修弥、いっつもそんな嘘ばっかり!」
「こいつほんっと適当だなー」
修弥を中心に笑い合う様子に、私はそれ以上扉を開けることも、ましてや声を掛けることも出来なかった。
何しているんだろう。
何がしたいんだろう。
するりと扉にかけていた手が落ちて、何も出来ないで立ち尽くす。
いっそこのまま、帰りたい。
帰ってしまいたい。
「実結?どした?」
突然の声に、我に返ったときにはもう修弥が目の前に立っていた。
「あ――」
「来たんだ。んじゃ行くか」
「や、いいよ、なんか、話してたし――…終わってからで…」
思わず邪魔してしまったような、そんな気分になって首を振る。
「いーって。お前も来てりゃあ声かければいいのに。
トモカが気づかなかったらいつまで待ってるつもりだったんだよ」
トモカ――その名前に教室内に少し視線を移すと、トモカさん、あの、女の子が私を見て優しく笑った。
ちくちく痛む。
何も反応が出来ずに目をそらし、それがなおさら自分の胸を痛ませる。