「じゃあね、デート楽しんで来なよ!」

そう言って、ぱっとあかるい表情を私に向けて佐喜子が教室を後にした。

一人きりになった教室は、こんなにも広かっただろうか。

誰もいなくなったこの光景は初めてでもないのに淋しい。


こんな風に毎日から置き去りにされている。

一人きりで動けないまま、ただ待つように過ごす日々。


『聞いてみたら?』

佐喜子の言葉を思い出して、携帯電話の時間を確認した。

多分修弥が来るまでまだ30分以上はあるだろう。いつものように待っていれば修弥はやってくる。

いつものように一緒に過ごせば今日が終わってまた、今日がやってくる。


――いいの?

ふと、自分で自分に問いかけた。


このままで良いの?もしも、私が想う最悪の返事だとしても、今日の最悪の終わりに比べたらマシじゃない。

聞きたいことを、聞いた方がいいのかもしれない。



怖いけれど。
体が震えるけれど。


ぎゅっと携帯を握りしめて、いつもより重たく感じる鞄を持ち上げた。