■

「じゃあね、実結」

「ばいばい」

クラスメイトが次々と帰っていく中で、私一人で携帯をいじりながら動かないで待っていた。

今日も――という言い方はおかしい気もするけど、今日も修弥は遅い。

ホームルームが終わって三十分以上経っただろうか。携帯を何度も開いては何度も閉じた。


「実結、今日出かけるんでしょう？」

もう既に帰る準備をして鞄を持った佐喜子が私の傍に来て言う。

「ん」

あの話を聞いてから、頭の中は同じ考えばかりを繰り返して今日の終わりのことまで考える隙がなかった。

こんな事をしている場合じゃないのに。


「ちゃんと、話してみるのもいいんじゃない？たまには。

一緒にいて分かってると思ってたってやっぱわかんないじゃない」

佐喜子の言葉に、何も言えずにただ小さく頷いた。

一緒にいたってわからないことばっかりな私たち。何をどういえばわかるのか、その術さえも分からなくなってしまっているんだ。


聞きたいことはたくさんあるのに、どういえば良いのかわからない。

聞いていって欲しい言葉は確かにあるのに、言ってもらえなかった場合のことばかりが頭をよぎる。



いつからこんなにも、弱虫になってしまったんだろう。