「なにしてんの」

不機嫌そうな声が私の頭上から降ってきて、顔を上げるとトイレから出て来たんだろう修弥が私を見下ろしていた。

「傘、ぶつけちゃって」

「や、ほんといいんで。大丈夫だから」

私の言葉と修弥の姿に、男の子はペコっと頭を下げて、友達の所に歩いて行く。

ホントに…なにやってんだろう。


「席、ねえな」

「あ、うん」

去っていった男の人に申し訳なくて、自分がバカだなあと思いながらぼけっと立つ私に修弥がそう行って先に出口に向かって歩く。

…ほんとに勝手だなあ。

そう思いつつも店内には席もないし、いてたって仕方ないか。


少し先を歩く修弥を追いかけるように私も店を出た。


「お前、ほんとにバカだな」


小走りで修弥に追いついたとたんに前を向いたまま修弥がぶっきらぼうに言う。

さっきの――私のことか。

「だって…混んでたし」

「もっと注意しろよ、バカか」

そりゃさ、私が悪いけど…そんな風に言わなくても良いじゃない。修弥にぶつけた訳じゃないんだから。

何でそんな風に言われないといけないの。

むっとして私は歩く速度を緩めた。

修弥は相変わらず早足で、私たちの距離は開くばかり。