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「実結が遅刻するなんて珍しかったね」
一限が終わってすぐに佐喜子が私の席にやってきて笑った。
朝は弱いけれど、お母さんが毎朝うるさく起こすから遅刻はあまりしたことがない。高校に入って多分初めてじゃないだろうか。
「んー」
「どうしたの?元気ないね」
今日は会う人みんなにそう言われるな。
遅れてきた授業の先生にも、同じことを言われた。
元気がないのは確かなんだけれど。
「私と修弥って、佐喜子から見てどう思う?」
自分では、自信がなさ過ぎる。
彼女として私は存在しているのか、修弥を彼氏として接しているのか。
「…は?」
まあ、そんな反応だろうな。
自分でも何を急に、という気持ちもある。
だけど分からなくて、自分では何も分からない。私たち二人を少し離れて見ることが出来なくて、自分の気持ちだけで精一杯だ。
「…あの噂、気にしてるの?」
心配そうな佐喜子の顔をみて、「気にしてない」とは言葉が出なかった。