「もう、いいよ。わかった」
何かを言いたいと思ったけれど、言葉にすることが出来なくて、私から背を向けて傘もささずに歩いて行く修弥を止めることも追いかけることも出来ない。
行かない方が良いんだと、頭の中では叫んでいるのに、だけど動けない。
行かないでと言えばいいのかと思いながら、そんなことは無意味だと体が告げる。
「修弥…」
きっと誰にも聞こえなかっただろう。
背中が遠くなって、もう手を伸ばしても触れることは出来ない。
少し手を伸ばしても、ただ雨が私の手を濡らしていくだけ。
「修弥」
どうしたら、この辛さから逃げられるんだろう。
諦めて、手放しても何も変わらない。
何もかもを拒否しても、涙が溢れるんだ。
「まって」