「あ、あれが柏木さんの彼氏だよ」
廊下を歩いていると、一日10回は耳に入るこのセリフ。
一緒にいる幹太は笑いを堪えている。
「あ、アイツ。ほら、サッカー部の、柏木さんの…」
「うるせぇ!!」
被せるように怒鳴りつけると噂をしていた奴らはビックリしている。
それを見て幹太は我慢出来なくなったみたいで爆笑した。
そんな幹太を冷ややかに見る。
「キレてもムダだよ。お前は『柏木さんの彼氏』なんだから。お前の肩書きなんだって」
「オレの名前、『柏木さんの彼氏』じゃなくて、高柳蒼っていうんだけど」
ボクはため息をついた。
わかってるんだ。ルウコと付き合うって事はこうなるだろうな、って。いくらバカでもわかってたんだけど…。
「もう一ヶ月たつんだからいい加減にしてほしいよ」
ボクの嘆きを幹太は「まあまあ」となだめた。