休み時間になって、ボクが廊下に出ると周りがみんな注目している。
まぁ、そうでしょうね。
あの『柏木 流湖』と噂になるんだから。
一緒にいた幹太も呆れている。
「すごいな、柏木さんの彼氏かもしれないってだけでこの騒ぎ」
「だから、何度も言うけどオレとルウコはそんなんじゃないから」
周りに聞こえるくらいハッキリ言った。
「まぁ…友達?だっけ。でも『大好きなソウちゃん』なんだよな」
幹太の含み笑いにため息をつく。
「だから、友達!メル友みたいなもんだって」
いくら相方の幹太にも手紙の話は出来なかった。
恥ずかしいし、それに…ルウコの意図がわからないにしろ、これはルウコも隠しておきたいんじゃないか、そう思ったから。
下駄箱の手紙。
それは大きな秘密が隠されてる、そんな気がするから。
どこに行っても周りが騒がしくてうっとおしいから図書室に行く事にした。
昼飯のパンを持って図書室に入ると人はほとんどいなくて安心する。
どこに座ろうか…周りをキョロキョロしていると、日当たりがいい窓側にルウコがいた。
弁当箱を横に置いて、何かを真剣に読んでいた。
「何、読んでるんだ?」
ボクが声をかけると、ルウコはビックリして顔を上げた。
「あ…ソウちゃん」
読んでいた分厚い本をパタンと閉じて脇に置いた。
(何の本だろう?)
わかっているのは、ボクには無縁そうな難しそうな本だって事だ。
ボクはルウコの向かえに座ってパンを口に入れた。
ルウコはボクを見て言った。
「ソウちゃん、パン…5コも食べるの?」
「え?いつもそうだけど?ルウコも食いたいなら1コやるよ」
クリームパンを渡そうとすると、ルウコは笑った。
「あたしはお弁当あるから大丈夫だよ」
「そうか?で、ルウコは一人で飯食ってるの?」
「うん。明日香は彼氏とご飯だから。いつもここで食べてるの」
ルウコも弁当を出して食べ始めた。
「ふーん。つまんなくない?」
ボクの疑問に寂しく笑っている。
「まあ、いつもはそうだけど、今日はソウちゃんがいるから嬉しいよ」
ボクを見てニッコリする。
(その笑顔は犯罪だぞ)
心臓がドキドキする。
ボクのドキドキなんてまるでわかっていないルウコは思い出したかのように、一冊の本をボクに出した。
「ジャーン!これから勉強なの」
それはワールドカップの特集のサッカー雑誌だ。
「あー、メッシ?」
ボクはちょっと笑ってしまった。
「何で笑うのよ。だって、あたしメッシって名前しか知らないんだもん」
ちょっとむくれた顔をしている。
「ルウコにわかるかな?サッカーは奥が深いんだぞ。他にもスゲー選手がいっぱいいるからな」
「これからわかろうとしてるんだから!」
ムキになってる姿はやっぱり可愛い。
「あ、じゃあさ、手紙に課題」
ボクは思い付いた事を言った。
「課題?」
「ルウコがその雑誌を見て、すごそうと思った選手を書いてみて」
ボクの課題に眉間に皺をよせた。
「あたしサッカー詳しくないもん。難しいよ」
「適当でいいよ。思い付いた人で」
ボクは無意識に笑っているみたいだ。
ルウコと話すのは楽しい、素直にそう思う。
「うーん…ベッカムじゃダメ?」
しかめっ面でルウコは言った。
その言葉にボクは吹き出した。
「いや、いいけど。ベッカムだってスゲーから。でもオレが聞いてる趣旨と違うかもな」
「そっかぁ」と言いながら雑誌をパラパラとめくっている。
ちょっと可哀想かな?と思ってしまった。
「嘘だよ。書かなくてもいいよ」
そう言ってもルウコは首を振った。
「ダメ。課題は必ずやります。で、もしも、あたしが選んだ選手が一人でもソウちゃんの好きな選手だったらお願い2コ聞いて?」
「お願いって?」
ボクはルウコを見た。
ルウコはちょっと照れながら言った。
「お昼ご飯一緒に食べてほしいのと、」
「うん」
「手を繋いで帰りたい」
ええええええー!?
ボクの顔は驚きすぎて目が点になっていたと思う。
ソウちゃんへ
ソウちゃんに初めて手紙を書いてからもう3週間の時が経ちました。
書くまではほとんど会話もした事がなかったのに、今ではすごく仲良しになれました。ありがとう。
何だか周りにひやかされたりして迷惑してない?
ごめんね。
でも、それでも、ソウちゃんは嫌な顔しないで、あたしと接してくれてる。嬉しいです。
さて!
そんな優しいソウちゃんからの課題にお答えしようと思います。
随分悩んで、テレビの特集もネットでも調べまくってあたしが閃いた人は3人。
どうか、ソウちゃんの思う人でありますように…
まず、一人目はポルトガルのC.ロナウド。
この人は人気もあるけど、実力もあるから。
次は、ブラジルのカカ。
この人も超有名人なんだよね。すごいんでしょ?
最後は、あたしがすごく勉強して予想した人!
イングランドのジェラード!!!・・・って具体的にはよくわからないんだけど(笑)ミドルシュート?ってのがすごいんでしょ?
こんな感じのルウコ予想ですが、ソウちゃんのお気に入りの人いるかな?
いてほしいな。
あたしはソウちゃんの事、いっぱい知りたいの。そして、あたしの事もいっぱい知って欲しい。
ソウちゃんって実は女の子に人気あるんだよ。明日香が言ってた。
優しいから。後はちょっと天然な感じが可愛いんだって。
ソウちゃんが優しいって事はあたし知ってるよ。
だって、あたしが1人でお昼食べてるの知ってから、毎日図書室に来てくれてる。
「暑いから」とか「うるさいから」とか理由言ってるけど、あたしのために来てくれてる事、ちゃんとわかってるんだから。
そんな優しいソウちゃんが大好き。
これ、告白になっちゃうのかな?ラブレターになっちゃう?
でも、これ正直な気持ちなの。
ソウちゃん、あたしは友達でもいいよ。ソウちゃんが恥ずかしいんだったら、噂になってるのイヤだったら、あたし友達でもいい。
だから、お昼だけでも一緒にいてほしいな。
ワガママかな?
手紙を書く人をソウちゃんに決めたのは、ソウちゃんだったら普通に接してくれる、そう思ったからなの。
友達になってくれるって思った。
だから思い切ってソウちゃんに手紙を書いた。
でも、なぜ手紙じゃなきゃダメなのか、その理由はまだ言えない。
ごめんなさい。
それでも手紙のやり取りはしてほしい。
これもワガママになるのかな?
何だか今回の手紙はワガママばっかりになってるね。
でも、許してね?
あたしはソウちゃんが大好きだから、繋がっていたいから。
だからワガママに付き合ってくれないかな?
その代わり、あたしもソウちゃんのワガママいっぱい聞くからね!
課題も無事?提出したから、高柳先生(笑)の答えを楽しみに待ってます。
答えが合ってたら・・・、自分で言ったのにドキドキします。
一緒に帰ってくれるかな?お昼ずーっと一緒にいてくれるかな?
うわぁ、緊張してきちゃった!!
ソウちゃん、いつもありがとう。
ソウちゃんからの手紙、宝物なんだ。
楽しみに待ってます。
ルウコより
今日は朝練はなし。
下駄箱を注意深く見ると、星柄の封筒が奥に入っていた。
周りをキョロキョロしながら、素早く手紙をカバンに突っ込んだ。
HRまでそんなに時間がないけど・・・、手紙の内容が気になる。
ボクはHRをパスして図書室へ走った。
手紙を読んでため息をついた。
イヤ、悪いため息じゃないから!!ドキドキしてるため息です!!
「当たっちゃった・・・」
ボクが出した「好きなサッカー選手」の課題。
C.ロナウドとカカは違うけど『ジェラード』の名前が入っている。
ジャラードはボクのTOP3に入るくらい好きな選手。
約束通り手を繋いで帰るのか?
昼は別にいいんだ。
ボクがルウコと話たくて勝手に図書室に通ってるんだから。
それに・・・
『大好き』って・・・・。
自分でもハッキリわかるくらいに顔が赤くなる。
この『大好き』はあの大好きでいいのか?
友達だから大好きじゃなくて、異性だから大好きって事?
そういう事?
「うわー!!ヤバイ!!」
ボクは手紙を握り締めて頭を抱えた。
だって、ボクも実は段々ルウコに惹かれている。
美人だからってワケじゃない。
いや、美人なのも好きなんだけど。
そうじゃなくて、ルウコのちょっと子供っぽい仕草とか、そうかと思えば大人みたいに喋る声とか・・・
「ソウちゃん」って呼ぶ、あの笑顔。
自分でも尋常じゃないくらいに心臓が高鳴っているのがわかる。
HRが終わるチャイムが鳴った。
それは「教室に戻ってルウコに返事をしろ」と言われているような合図。
「普通に出来るかな・・・」
またため息が出る。
でも、ボクだってルウコと手を繋ぎたい。
「よし!」
意を決して教室へ向かう。