「あ、ボクは別にいいですけど」


「そう?じゃぁ、ソウちゃんって呼ばせてもらおうかな?慣れちゃってるし」




しばらく間があった。


もうすっかり夜になっていて、気がつくと後部座席でルミはウトウトしていた。



「・・・これからもルウコは発作でソウちゃんの前で今日みたいに倒れるかもしれない。もっと悪く言えば、そのまま・・・。考えたくないけど、その可能性もあるわね。それでもソウちゃんは平気?」


「平気って、どういう意味ですか?」


「イヤでもルウコの死に目に遭ってしまうかもしれない。そういう意味よ」


ボクは自分の手元を見ていた。ルウコとお揃いの指輪がある。

『あなたは私の生きる意味です』。

そう彫ってある指輪。



「何で、そんなに後ろ向きなんですか?」


ボクが言うと「え?」という言葉が返ってきた。


「治らないのはわかっています。聞いてます。・・・でも、それがいつ来るかわからないじゃないですか。それなのに何で、もうあきらめるんですか?」


「でもね、ルウコはいずれ・・・」


「その「いずれ」はまだいつか決まってない。ボクは・・・オレはそれがずーっと先の事だって信じてる。ルウコだって同じです。それなのに、親が諦めてどうするんですか。支えてあげなきゃいけないのはアンタら親だろう?」


「ソウちゃん・・・」


「ルウコの未来を勝手に決めて諦めんなよ、アンタら何のためにいるんだよ」


ボクは初対面の『彼女の親』に怒りを感じた。


何で諦めるんだよ、死ぬのを待ってるみたいじゃねーかよ。


ボクは、そんなの絶対認めない。