「ルウコ、謝る必要ないから」
ボクがそう言ってもルウコは下げた頭を上げなかった。
「ごめんなさい・・・、大事な息子さんに負担をかけているんです、あたし。本当にごめんなさい・・・」
テーブルにポタポタと涙が落ちている。
しばらく誰も何もいわなかったけど・・・
「ルウコちゃん、謝る事は何もないのよ」
と母親が言った。
その言葉にルウコがようやく顔を上げた。
「ソウってね、いつもぼんやりしていて・・・、何考えてるか息子なのによくわからない子なの。何の目標もなさそうだし、つまらなそうな顔をいつもしている子なんだけどね。・・・でも、最近ちょっと変わったかな?って思ってね、それはルウコちゃんがいるからかな?って思ったのよ」
「あたし・・・ですか?」
「ソウのお付き合いしている子が、多分病気か何かじゃないのかな?って何となくは気づいていたの。前に本なんてロクに読まないのに、分厚い医学書買ってきて真剣に読んでいたりしたから」
「そう・・・ですか」
ルウコはまた下を向いてしまった。
「下を向く事なんて何もないのよ。ソウがちゃんとしっかり何かを考えたり悩んだり、そうやって真剣に思える事が大事なんだから」
母親はボクを見た。
ボクは何とも言えない気持ちで母親を見返した。
「ソウがルウコちゃんの支えになってあげているのかはわからないけど、あなたはあなたの身体の事を考えて大事にしなさい。でも、病気になんか負けないで強くなりなさい。あたしは普通なんだって胸を張りなさい。ソウ、あんたはルウコちゃんをしっかり支えるのよ」
「わかってるよ」
ボクがボソっと言うと、母親は「ほら!ルウコちゃんも笑って」と言った。
ルウコは涙を腕でゴシゴシ拭ってから笑顔になった。