ソウちゃんへ


夏休みという事で手紙は郵送する事にしました。


この間のフェス、すごく楽しかった。


自分が病気だって事を忘れてたよ。


こんな事、発病してから初めて。


ソウちゃんと過ごすとね、毎日が楽しくて自分が病気だって忘れちゃう。


先生にも言われてるの。


楽しいと、笑うと免疫が上がるって。


だからソウちゃんはあたしの特効薬だよ(笑)


ソウちゃんがいる世界、見える景色全てあたしには眩しい。

そして楽しい。幸せ。


いつもパワーをくれてありがとう。

そんなソウちゃんにわがままなあたしからお願いと提案があります。


夏休み中にお泊まりデートしない?


今、いやらしい事想像したでしょ?(笑)


それは叶うはわからないけど(笑)、2人きりで24時間以上、眠る時も起きる時もソウちゃんといたい。


無理かな?


泊まる場所はどこでもいいの。


しいて言えば、自然がいっぱいあるところかな?


また2人で決めようね!!


思い出、ソウちゃんと過ごす思い出をあたしに下さい。


連絡するね♪



ルウコより

「柏木流湖さんて誰よ」


夏休みも部活は当然あるわけで。

帰ってきてシャワーから出ると姉貴が手紙を手にニヤニヤしている。


「彼女」


スポーツドリンクを飲みながらボクは手を出して、手紙をよこせと合図した。


「え!?アンタ本当に彼女いたの?しかも手紙って・・・随分古風な彼女なのね」


手紙を渡しながら姉貴は驚いている。


「まぁね。別に古風でも何でもいいだろ」


リビングのローテーブルに置いてあった姉貴が読んでいたレジャー雑誌を手に取る。


「ちょっと!あたしが読んでるんだけど」


「後で返すよ、うっせーな」


文句を言っている姉貴を無視して自分の部屋に戻った。




レジャー雑誌を見たかったのは、ルウコとどこかに行こうかな?と考えていたからだ。

だからルウコからの手紙を読んでかなりビックリしてしまった。

「泊まりって・・・」


思わず呟いてしまう。


ボクが考えていた「お出かけ」は単純に海に行くとか、今度は動物園がいいかな?とかそんな「日帰りお出かけ」だったから。


泊まりってルウコは大丈夫なのか?


ちょっと考えていると携帯が鳴って、思わず「うぉ!!」と驚いてしまった。

着信を確認するとルウコからだった。


『もしもし、ソウちゃん?部活終わってる?』


電話に出るとルウコの明るい声が聞こえた。


「終わってるよ」


頭の中で「泊まり」がグルグル巡っていて何だかぎこちない返事をしてしまった。


『そろそろ手紙着いてるから読んでくれたかなーって思って』


「うん・・・今見た」


『あ、読んでくれた?じゃぁ、どこ行こうか?』


楽しそうなルウコに対してボクはかなり警戒しながら聞いた。


「どこってのは・・・その・・・書いてた・・・あの・・・」


そんなボクの声を聞いてルウコは笑い出した。


『お泊りに決まってるじゃない。・・・あ、ソウちゃん、もしかしていやらしい事考えてない?』


「は!?」


『あははは。ソウちゃんって本当に面白いね!まぁ、場合によってはそうなるかもしれないよね』


「え?」


『だって、あたし達付き合ってるのよ。自然の流れじゃない?』


「そう・・・ですか・・・?」

ボクの返答がそんなに面白いのかルウコは声を出して笑っている。


「ルウコって積極的だけど、変な事聞くけど初めてじゃないの?」


『初めてよ。当たり前でしょ?だって彼氏ってソウちゃんが初めてだもん』


「だったら、もっと慎重に考えてもいいんじゃない?」



何だか、ボクの方が初体験をする女の子みたいな感じだ。

そりゃ、ボクだって健全な高校男子なので彼女とそういう事をしたいとは普通に思います。

って誰に対して敬語なのかわからないけど、ルウコにそういう事をしていいものか?と聞かれれば「うーん」と考えてしまう。

何が病気に影響するかわからないし、それに心のどこかではまだ「あの柏木さん」とボク自身も思っているのかもしれない。




『逆に聞くけどソウちゃんって初めて?』


ルウコがちょっと真面目な感じで聞いてきたから一瞬返答に困ってしまった。

初めてなワケないだろ!!ってのが本音だけど、言っていいんだろうか?


「いやぁ・・・うーん、どうかな?」


『何それ。隠さなくていいよ、別に。彼女いた事あるんだし当たり前よね』


そうは言ってるけど、ルウコの声は不機嫌になった。


「そんな不機嫌になられても・・・、これはさっきルウコが言ってた自然の流れってヤツなわけだしさ」


何でボクが過去の事で言い訳をしなきゃいけないのかちょっとよくわからなくなった。


『女の子は誰でも彼氏の1番でありたいの!わかってるけど気に入らないのは事実だもん』


「あ、そうなの?何だかわからんけど、すいません」


見えないのについ頭を下げてしまった。

『まぁいいや。許してあげる。その代わりにあたし、行きたい場所あるからそこでいいかな?』


やっと機嫌が直ったみたいでホっとする。


「いいけど、どこ?」


「あのね・・・」



ルウコが指定してきたのは、隣の市・・・っても電車で1時間もしないけどにある洋館風なペンションらしい。

結構小高い場所にあって、夜にはそこから夜景が見えるのが売りなようだ。



「オレは別にいいけど。ルウコと行けるならね」


そう言うと、ルウコは嬉しそうに笑っている。


『実はもう予約しちゃった』


「え?」


『だから、その日は当然ソウちゃんは部活お休みしてよね!あたし達の大事な記念日になるんだから』



すっかりルウコのペースになってしまっているけど、ルウコは本当にいいのかな?

てかオレはルウコもしちゃっても大丈夫なのか?



記念日ねぇ・・・


そう思いながらもちょっと楽しみとドキドキする気持ちになった。

ルウコが言う『お泊り記念日』。



ボク達はルウコが決めたペンションに来ている。



「前に明日香がオススメって言ってたの」とルウコは言ってたけど・・・

明日香が彼氏とやったかもしれない部屋かもなー・・・と微妙な気分になった。



でも、実際来てみると本当に古い洋館を改装したらしく、オーナーが言うには築100年以上らしい。

部屋に案内される時に登ったちょっとギシギシなる階段も歴史があるな、って思えて何だかその音が心地よかった。



部屋も値段のワリに(学生割引だって!高校生とは言ってないけど)広い作りで昔の金持ちの家にありそうな真紅のソファがデンっと置いてある。



オーナーが「ごっゆくり」と笑顔で出て行ってから、ボクは荷物と一緒にソファにドサっと座った。



「ソウちゃん!こっちにきて」


一応2間になっているから、寝室側からルウコの声が聞こえた。


「どうした・・・!?」


ボクは窓側に立っているルウコよりもベッドを見て仰天した。

てっきりツインだと思っていたらダブルだ。


「ソウちゃん?」


いつものちょっとロックな感じの服装とは違い、アジアンテイストな格好をしているルウコは首を傾げた。





「ルウコ!ベッドがない!!」


ベッドを指差しながら叫ぶボクを見てルウコは「え?」と聞き返してきた。


「だから、ベッドがないんだよ!!」


「・・・え?あるでしょ?何言ってるの?」


ダブルのベッドに手を置いてルウコが不思議がる。


「1コしかねぇよ!!!」


「あぁ」


ボクが何を言いたいのかようやく理解したみたいで笑っている。


「あたしがダブルで予約入れたの。一緒に寝たいもん」


「はぁ!?」


バタバタしているボクにルウコはため息をついてから大声で言った。


「ソウちゃん!!男でしょ!男だったら彼女がここまでしたんだから腹括りなさいよ!今日するったら絶対するの!わかった?」


ボクはルウコの剣幕に押されて


「・・・はい・・・」


とうなずく事しか出来なかった。

ルウコはニッコリ笑って「楽しみね」と言った。



ボクはベッドに座り込んでブツブツ呟いた。


「・・・いいのかな?ルウコ初めてだし・・・それに女の子はスゲー痛いらしいから、それが原因で発作になったりしたらどうしよう・・・」



「あのねー」


ルウコもボクの隣に座る。


「ソウちゃん、あたしの病気に『激しい運動』ってあるから心配してるんでしょ?セックスは激しい運動かどうかわかんないけど、あたし出産も出来るのよ?先生に出産は出来ますって言われるの。それってセックスしなきゃ成立しないんだから大丈夫だよ」




ルウコの口から『セックス』を連発されると変な感じがする。

学校一のモテ女、柏木流湖がセックスしたがっている。

以前のボクだったら全く想像出来なかっただろうな・・・。





「聞いてるの?」


「え?あぁ・・・うん。聞いてるよ」


ルウコは立ち上がって窓を指差した。


「外、すっごくキレイだよ。ちょっと散歩しようよ」