「何って?別に」

サトは笑いながら言った。
それがミカを完全にキレさせたみたいで、ミカがサトを思い切り引っ叩いた。


あたしも男の子も唖然とした。


ミカはあたし達の中ではあんまり感情を表に出さないタイプで、親友のチカと違って無愛想に見る人もいる。
でも、ミカは口では文句を言うけど優しいって事はみんな知っている。


気がつくとミカは泣いていた。

サトも叩かれた実感がないみたいでポカンとしている。

「サトシ、バカにするのもいい加減にしなよ。あんたにうららの気持ちわかるの?ずーっとサトシの事だけ好きで、いつかサトシが自分を好きになってくれるかもしれないって待ってる気持ちわかるの?」

「ミカ、別にいいよ」

あたしが止めても「よくない!」とミカは怒鳴った。

「お前に関係ねーじゃん」

サトはまだ笑いながら言った。声の感じで少し酔いは冷めたって事がわかる。

「オレとうららの問題なんだよ」

うーちんから「うらら」に戻っている。

「そうだよね、あんたらの問題だとあたしも思うよ。だからずっと黙ってたし、うららも彼氏と別れてないのは事実だし。でも・・・」

ミカは涙を袖で拭った。

「サトシがうちに来るのは別にいい。あたしもサトシの事友達だし大事だし。来てもらって嬉しいし。でもさ、あたし、いつも渡してるよね?うららの手紙」



あたしがミカの家に来る時は運が悪いのか7割がたサトは来ない。
ずーっと喋りながら待ってるんだけど、そんなあたしを見てミカが、
「手紙書いておけば?必ず渡すから。会えなかったら手紙書きなよ」
と言ってくれて、あたしはいつもサトに手紙を書いていた。

『サトに会いたいです。話がしたいです。笑顔が見たいです』

いつもあたしはそれを書いていた。


「うららごめんね、間違って1回見ちゃったの手紙。あたしさ、それ見たら悲しくなって涙出ちゃった」

気づくとあたしもミカのもらい泣きな感じで涙目になった。

「いいよ。見てもいいんだよ。それにサトは何も悪くないんだよ」

「違うよ、うらら。サトシが悪いの。コイツがわかってるようでわかってない」

「何が?オレの何がわかってないわけ?」

サトもムっとした顔で言った。