あたしは久しぶりにヒロに電話をした。

たまたま家にいたみたいだけど、そういえば携帯の番号すら知らない。

「うぃーす。すっげ久々。生きてたか?」

懐かしい声。

「うん。ヒロは?」

「変わんねーよ。チイも元気だぞ。今度チイにも電話してやれよ」

「そうだね。今度かける」

「何かあったのか?」

ヒロは昔と変わらない。勘がいい。

「何かって、すっごい好きな人が出来た」

「何だその「すっごい好きな人」って。好きな人じゃ足りないのか?」

怪訝な感じで聞いてくる。

「憶えてない?昔さ、花くんと話してて、すっごい好きって何だろうって話」

「あー、ケンタッキーでだろ?憶えてる」

「そう。そのすっごい好きがわかったの。今、好きな人が多分そうなの」

あたしの言葉にヒロは吹き出した。

「何?笑うところないけど」

あたしが不機嫌に言うと、

「いやー、恋してるなーと思ってさ。初めてそんなルンルンした声聞いた」

と言った。

あたしはサトの話をした。
ヒロは「へー」と言いながら聞いていた。

「で、サトってあたしの事好きだと思う?」

あたしの質問にちょっと悩んでる様子。

「わかんねーな。気はあるとは思うけどな。そんなヤツ、オレの周りにいないからデータなし!自分で頑張るしかねーな」

「そっか。あたし頑張るね!絶対頑張る」


「おー頑張れよ」


電話を切った後、携帯の番号を聞くのを忘れたのを思い出した。

(今度聞けばいいか)

とその時は思っていたけど、ヒロとの会話はこれが最後になった。