「うらら」

ちょっと興奮気味に「先輩」はあたしの前に立った。

「聴いてた?」

(は?バカじゃねーの、コイツ)

「あんなデカイ声で歌ったら隣町まで聞こえたんじゃない?」

あたしは冷めた顔で言った。

「うらら、あの曲好きだろ?オレ、練習したんだよね」

(そんな事、聞いてねーし)

あたしは冷ややかな表情を一切崩さなかった。

「あれ?」

その様子を見て「先輩」は何かおかしいと思ったようだ。

それを見かねたユキが「先輩」に言った。

「あの、先輩?うららね、あーゆー事されるの大嫌いなんですよね」

ユキの言葉に「先輩」はビックリしているみたいだ。

「先輩、うららの事、なーんにもわかってないって事ですよね?」

「先輩」はちょっと焦った顔。

「先輩があんな風にしちゃうと、うららの気持ち無視してヨリ戻さないとダメって事ですよね?うららの気持ち、一切無視ですよね?わかります?」

ユキのあたしの気持ちを代弁した意地悪な言葉。困っている「先輩」。
あたしは腹が立って涙目になった。

「ボランティア」ヒロの言葉を思い出した。
あたしはまだこの男にボランティアをしなきゃいけないの?

「・・・いいよ。戻ってあげるよ」

あたしは低い声で言った。

「え?」

「先輩」はちょっと笑顔になる。

「でも、これだけは守ってほしい。あたしの生活、人間関係、やる事に一切関わらないで!干渉しないで!だったら、あんたが卒業するまで我慢するから。形だけ彼女に戻ってあげる。わかった?」

あたしは大声で怒鳴りつけた。


ヒロ・・・、あたしのボランティアはまだまだ続くみたいだよ。