「あ、そう。ならいいんだけど。うららちゃん、後夜祭は誰と見るの?」

先輩の笑顔がちょっと怖い・・・。

「ユキと。幼馴染のユキと見ますけど」

「あー、いっつも一緒にいるあのヤンキーっぽい子ね。じゃぁ、そのユキちゃんと後夜祭はステージのそばで見ててくれるかな」

後夜祭はちょっとした余興もあって、そのためのステージがある。
余興が終わって花火が上がるらしい。

「ステージですか?先輩、余興出るんですか?」

あたしが聞くと、「とにかく!」と強調された。

「絶対、ステージのそばな、わかったか?いなかったらマイクで名前呼ぶからな」

そう言うと先輩はさっさと歩いて行ってしまった。

あたしも友達もポカーンとそれを見ていた。







「別にいいけどさ」

ユキはアイスを食べながら言った。

「何でステージのそばなわけ?遠くからでも見えるじゃん。タバコ吸えないし最悪だわ」

あたしもユキの隣に並んでアイスを食べている。

「だって、しょうがないじゃん。怖いんだもん。名前呼ばれるのもヤダし」

あたし達はステージのわりと近くの石段に座っている。


「お、ちゃんといたな」

さっきの先輩が笑顔で近づいてきた。

(普通に笑うとカッコイイんだけどな、この人・・・)

「名前呼ばれるのイヤですから。で、何なんですか?」

ステージでは2年生が寒いギャクを披露している。

「ユキちゃんだっけ?」

先輩はユキに話しかけた。「はい?」ユキはキョトンとした。

「うららちゃん5分だけ借りていいかな?すぐ終わるから」

ユキは心配そうにあたしを見てから

「いいですけど・・・、変な事しないで下さいね」

と言った。

「大丈夫!すーぐ終わるから」先輩はあたしの手を引っ張ってステージのそばまで連れてきた。あたしの強張った顔なんて全く気にしていない。