「もうやめな。別れなよ」

ユキはあたしに言った。
あたしは西を見た。西もうなずいている。ヒロも同感らしい。

「うららは頑張ったとオレは思う。言いだしっぺはオレだけど。だから、もういーんじゃね?別れろよ」

ヒロの言葉にあたしは難しい顔をした。

「あたしも1秒でも早く別れたいんだけど、難しいんだよね。納得するようには思えないしさ」

あたしは押し倒されてから先輩が大嫌いになった。
だから別れてくれるならさっさと別れてもらいたい。

「そうだよねー、あんた達の事、学校で知らない人いないもんね」

ユキもため息をついた。

「いや、簡単じゃん」

ヒロはあっさり言った。
あたし達は「え?」と言った。

「手紙。紙に「別れて下さい」って書いてシカトしとけばOKじゃね?ちょうどもうすぐ夏休みになるし、最初は周りに何か言われるかもしれねーけど、休み入れば忘れるって」

「ヒロ、昔から手紙書けばOKって言うよね?それ、効果発揮した事ないよ」

あたしは呆れた。
ヤスくんに告白した事を思い出したからだ。

「いやー、今回は大丈夫だと思うぞ。よし、決定!!よかったな、うらら」

ヒロの笑顔にあたしは内心「どうだか・・・」と思った。



翌日、あたしは先輩に「これ読んで」と手紙を渡した。
ヤスくんに書いた時と違って、たった一行「別れて下さい、キライです」。

あたしが先輩を振ったという噂はあっという間に広まった。
同学年の仲のいい子達はあたしに「頑張ったね」と同情的なのに対し、先輩の友達は男女かまわずあたしを「小悪魔女」と言った。

それでも、一応別れられたのだから、ヒロの手紙作戦は効果を発揮したのかな?とも思った。

でも、夏休み前の学校祭であたしにはとんでもない事が起こった。