ヒロの家には来るのは卒業以来だ。

いつものようにおばさんに挨拶すると「あれ、久々な顔だ」と言われた。

「・・・で、またこの変則メンバーなんだな」

ヒロはもうベースをやめたのか、部屋には譜面は散らばっていなかった。

「いいじゃん、別に」

ユキがコンビニの袋からお菓子を次々に出している。

高校に入って、あたしは前よりユキといる機会が多くなった。
部活がない限りは登下校もほとんど一緒。

「西、元気だった?」

あたしはユキが出したお菓子を開けている西に言った。

「まぁな。うららは元気みたいだな」

「うん、元気」

「友達もいっぱい出来たみたいでよかった」

西はちょっとだけ笑顔になった。

4人で乾杯してビールを飲み始めると、また例のサッカー部の先輩の話題になった。

「あたしも言ってるの。面倒だから付き合えば?って」

ユキは缶ビールをヒラヒラさせながら言った。

「しょうがないんじゃね?あきらめろ」

西もうなずく。

「えー、ヤダよー。何も楽しくないもん。それに・・・」

あたしはちょっと言うのをためらった。

「何?」3人があたしを見る。

「あの、キスとか・・・エッチとか、あたしした事なくて、最初は好きな人がいいんだけど・・・」

あたしの言葉に一瞬シーンとなってから爆笑になった。

「え?お前、キスすらした事ないの?」

ヒロがビックリしている。

「ないよ!何か文句あるか?」

3人とも、すでに経験済みのみたいだから恥ずかしくなった。

「いや、可愛いよ。あたしはいいと思うな。こう見えて処女ってのが」

ユキは笑いながら言った。

「は?こう見えてってあたし普通じゃん。それにした事ないのも普通だよ」

「先輩、泣いて喜ぶなー。うらら処女かー」

ヒロもお腹を抱えて笑っている。