「はい?」

2人同時に声がハモってしまった。
そこに立っていたのはりっちゃんだった。

あたし達は顔を見合わせて改めてりっちゃんを見た。

あの日、クリーナーを取りに行ったけど、特に話しもせずに「はい」と渡して、それ以来今日に至る。

「あのね・・・」

りっちゃんは下を向いている。

「うらら、あのね」

その言葉でヒロが「オレ、行くわ」と席を立ったけど、あたしはその袖を掴んだ。

「何?何か用?」

あたしはそっけなく言った。

「その・・・、壁新聞?、大変だと思うんだよね。手伝っていい?」

意外な言葉にあたしは「え?」と何故かヒロを見てしまった。
ヒロはへーっと言う顔をしている。

「何で?りっちゃん、係じゃないじゃん」

「ええと・・・、すっごく時間かかったけど、うらら、ごめんね!本当にごめんね!」

頭を下げられてギョっとなる。

「え?何?何でごめんなの?」

「今まで、うららにしてきた事、私ようやく気持ちわかって・・・、自分がこうなってわかって・・・、どうしても謝らなきゃって思った」

あたしは複雑な気持ちでりっちゃんを見ていた。
当たり前かもしれないけど、自分がその立場にならなきゃ気持ちなんてわからない。りっちゃんの言ってる事は正しい。でも・・・

「りっちゃんさ、うららの気持ち本当にわかってんの?」

ヒロが言った。

「全部はわかんない。でも、少しだけかもしれないけど・・・私に出来る事って、うららに謝るしか思いつかなくて、クリーナー持ってきてくれて嬉しくて、そしたら辛かったんだよね、ってすごく思って、それで・・・」

りっちゃんは見る見るうちに泣き顔になってしまった。

「お前泣いてるけど、うららはもっと悲しかったと思うぞ?」

そう言ったヒロをあたしは制した。

「・・・、いいよ。でも、りっちゃんはあたしの気持ちはわかんないと思う。だからごめんって言われても困る。でもね・・・」

あたしはヒロを見た。複雑そうな顔をしている。

「でも、壁新聞、本当に大変なのは事実だから。手伝って」

あたしが笑うとヒロも苦笑いをした。

人の痛みがわかればそれでいいかもしれない。そう思った。