「あ、うららだ。学校くるなんて珍しいね」


玄関で上靴に履き替えていると、幼馴染で親友のユキが声を掛けてきた。

「久々ー。ユキ元気だった?」

最近はユキともあんまり遊んでなくて顔を合わせるのは本当に久々だった。
ユキは茶色くした髪をかきあげた。

「ユキ、髪伸びたねー」

あたしが言うと、「あんたも相当伸びたと思うけど」と言った。

登校拒否になる前は肩より上だったあたしの髪もわきの下くらいの長さになっている。

「うららが学校来るって事は何か行事あったっけ?」

「いや、ないよ。ただ来ただけ」

あたしの言葉にビックリした顔をしている。

「何?おかしい?」

「いや・・・、おかしくはないけど。どうしたの、急に」

「うーん。あたしは友達に恵まれてるなって思ってさ。ユキにもね。」

その言葉に「ヒロかー。なるほどね」とうなずいている。

あたしはユキがジロジロと見るから「何さ?」と聞いた。

「前から聞こうと思ってたんだけど、あんたとヒロって付き合ってるの?」

「はぁ?」

ユキの言葉に今度はあたしがビックリした。

「だってさ、ヒロってうららの事になるとすっごい心配するじゃん」

「いや!ないない!!男だって思った事ないもん」

あたしは笑ってしまった。


そう。あたしもヒロもお互いの事を全く異性として意識した事がない。
大人になった今でも考えてみるけど、やっぱり恋愛対象ではなく友達だった。
異性の「親友」。ちょっと変だと思われるけど、あたしは変だと思った事は一度もない。


廊下をユキと並んで歩いていると、ユキは「あ、そうだ」と思い出したように言った。

「ん?どうした?」

「ここ最近かな?1ヶ月くらい前から。あんたのクラス面白い事になってるよ」

ユキはちょっと意地悪そうに笑った。

「何?面白いって。あのクラスのどこに面白い要素があんの?」

「まぁ、行ったらわかるから」

そう言ってユキは自分の教室に戻った。
あたしも自分の教室に入った。