キミとの思い出は強烈で鮮明だったけど、この物語を書こうと思って中学時代の日記代わりにしてた手帳を発見しました。


細かくキミと何を話したとか、ケンカしたとか、「バーカ」とか、あたしの手帳はキミの事でいっぱいでした。

当たり前だよね、あの時のあたしにはキミしか友達がいなかった。

だから手帳を埋め尽くすのはキミとの出来事ばっかり。

中2の始めの頃の研修旅行で、あたしもキミも運が悪くて余興をやらされました。

あたしはクラスの子とお揃いの田舎くさい格好をして、昔の歌手の懐メロを歌わされ、キミは大物演歌歌手の歌のコーラスだけを浴衣姿で歌うっていうかなりな屈辱をお互い味わったよね?

後はさ、テストの点数が悪かったり、ベースのチューニングが変だったり、ベースを弾きながら歌うキミの歌声が変だって思ったり・・・




あたしがまだソッチで暮らしていた頃、救ってくれたのはキミです。

キミの存在あってこそのあたしです。




二十歳の9月18日、キミは突然この世を去りました。

なんの前触れもなく、あたしは人から聞くのではなく新聞で、文字でキミの死を知りました。

お墓参りに行くまで、キミ専用の思い出箱があるんだけど、その中に記事を入れていました。

祖父母が亡くなって、それは悲しい事だけど、「親友」が死ぬって事は苦しい事を知りました。

記事を読んで、友達から連絡がくるまでの間、実はあたしは頭がおかしくなっていたかもしれない。

居間の端っこで頭を抱えてボロボロ泣いて、そうかと思うと新聞を出して

「これ、字が違うかも」とお母さんに笑いながら何度も言ってみたり、「イヤー!!」って奇声に近いくらいな大声で叫んだりしました。

お母さんに引っ叩かれて現実に戻った事を思い出します。


あたしがあたしじゃなくなる、そう思いました。

キミの死を受け入れるとあたしが消えてしまう、そう思った。

だって、キミがあってこそのあたしだったんだもん。

だから、キミの死を受け入れるのはやめたの。

現実を見なきゃいけなかったんだけど、そうするとあたしは生きていけない、わかっていたから受け入れなかった。