「イチゴ買ってきたよ。皆さんにもお裾分けしてね」


恋人がイチゴのパックを持って病室に入ってきた。


病室のお婆ちゃんに「こんばんは」と挨拶をしている。



(どうしよう・・・)


あたしは聞いた事実を受け入れられなくて、恋人に言えないでいた。




「もうすぐ退院だね」


恋人は笑顔で言った。


その顔を見た途端、涙が一気に出てきた。



ここは病院。
あたしよりも重い病気にかかっている人がたくさんいる。
死を目の前にしている人がいる。



今日は珍しく、あたしのベッドは幸いにカーテンを全部仕切っていたから声を出さないように恋人のシャツに顔を突っ込んでずーっと泣いていた。