それは、父親が長い単身赴任を終えて実家に戻ってきた日。


引越しの業者のオジサンが「見える人」らしいと母親から聞いていた。

あたしは幽霊は多分、見た事があるからその手の類のものは結構信じる方だと思う。


父親が帰ってくる事で、数年前に結婚したサクヤの部屋にあたしは移動する事になった。
父親があたしの元の部屋に荷物を入れる事になった。



引越しの業者の人が何人がゾロゾロと荷物を運んでいた。


あたしは少し前に、自分の部屋で女の人に髪の毛を引っ張られるという心霊体験をしていたから、父親はちょっと嫌そうだった。
父親はそこまで幽霊などは信じないけど、そんな部屋は誰も嫌なものだ。


「見える」オジサンが荷物を運んでるらしいから、あたしは2階に上がって、かつての自分の部屋を覗いた。


ベッドを搬入し終わっていた所だった。


「あの」

あたしは、多分この人かな?って人に声を掛けた。


「あたしの部屋って何かいるんですか?」


そう言うと、見るからに人の良さそうなオジサンが振り返った。

あたしをマジマジと見て、オジサンは言った。


「お嬢さん、壁に写真貼ってなかった?」

壁の一部分を指差した。


「うーん、髪の長い男の子かな?多分、もう亡くなっているんじゃないかな?」


あたしは驚いてしまった。


24、25歳の頃、あたしはチイからもらったヒロの写真を貼っていたからだ。

ヒロを思うのは辛かったけど、写真に向かってよく話し掛けていた。


「貼ってました・・・。確かに彼はもう亡くなってます」

あたしはビックリしたまま答えた。