次は体育館に行きたいと、先生にお願いした。
先生は嫌な顔一つしないで「いいですよ」と言った。

体育館こそ何にも変わっていなかった。

体育館の真ん中あたりに黒板があって、バレー部のあたしはいつもそこに座っていた。

「あたし練習サボってここに座ってたり・・・」

ちょっと走って、「ここでね!」と言った。

「ここ、サーブポイントなの。ここからサーブ打つの」


「うらら」

モリが声を掛けてきた。

「ん?」

モリは体育館の入り口の上を指差した。


そこには・・・


「ゲルニカ・・・・」

あたしのクラスの美術の天才くんが卒業制作で描いた原寸大のピカソのゲルニカがあった。15年経ったのに全く色あせてない。


「それ、ちょっとした我が校の自慢なんです」

先生が言った。

「これ、ゲルニカ。あたしのクラスの子が描いたんです」

あたしが言うと先生は「え?」とかなり驚いた。


ゲルニカは15年経ったなんて思わせないくらい鮮やかな白黒だった。


あたしとモリは何も言わずにしばらくゲルニカを眺めていた。



体育館を出ると「あ、忘れてた」とモリは言った。

もう一度、あたし達のクラスがあった3階に上がって、曲がり角にある水のみ場にきた。

「ここ、憶えてる?」

モリはあたしに言った。

「え?水のみ場じゃん。それがどうしたの?」

「オレさ、ここでうららに話しかけたんだよ」

「は?」

あたしはビックリした。

そんなはずはないと思う。
当時のあたしはモリが怖くて逃げ出すくらいだった。